カジュアルプレイについてと楽しさの本質、それと渋谷ミント

たぶんカジュアルイベントが今よりもっと流行ると思う。
前回の日記にも書いたけど、去年からカジュアルプレイに予算が出始めているからだ。

そして日本にはカジュアル層が少なく見える。
実際には多いのかもしれないけど、そういう層がイベントに顔を出すことが少ない。グランプリでもFNMでも。
原因はガチ層がプレイスキルの部分でカジュアルを見下しているとか、得るものが少ないと勝手に解釈してコミュニティへの受け入れをしないとか、カジュアルプレイヤー側も「私はどうせ下手だから」とか「下手なプレイを指摘されて恥をかきたくない」と気後れしちゃってたりする。そんな気後れとか本当は無用なんだけど、開放的なコミュニティじゃないと入りづらいのも確かだ。
日本はマジックに使う客単価は高いが、ユニークプレイヤーの偏りが激しい。
これは感覚的に他国と比べた時の私の印象である。
その偏りを均すことに、日本のマジックカードショップの未来への道があるのではないかと考えている。

かく言う私もGENCONに行く前までは気持ちだけガチ層だった。
より上手い人のプレイやカード選択を知りたくて、短時間で効率よく上達すべく行動していた。
しかしそれは短期間のマジックプレイにおいては有効だが、人生を通じてマジックとの関わりを必ずしも豊かにするものではないと知った。
人は誰しもトーナメントマジックに疲れる時がやって来る。
10年以上も全力でトーナメントで活躍し続けるなんて超人としか言いようが無い。だから殿堂入りなのだ。
そして疲れた時にスパっと止めてしまうのも本人の自由だが、一度引退して6年ぶりにマジックに復帰した自分が思うに、その引退していた時期は勿体無いと感じている。
その休止期間の間にもカジュアルマジックに触れてさえ居れば、私のエターナル環境は今よりもっと活動的なものになっていただろう。

少し逸れたので、本題に戻そう。
今後流行りそうな店舗イベントとして、カジュアルマジックを予測した。
コンテンツについて去年は世界的にFNMを取り上げたが、やり方がまずかったせいでそれほど大きなムーブメントにならずに終わった。
その教訓を生かして今年からは店内リーグに予算を割いている。
最近のWizardsは小売店とWizardsがwin-winになれる方法を探している。
ラヴニカへの回帰で始まる店内リーグは飾り付けが目を引くもので今までとは違うものとなっている。
しかしいくら店内のPOPやインテリアを変えてみても、ゲームそのものを面白くするのはその時間と空間を提供しているホスト（お店）側なのだ。
画一的な企画を店舗に落とし込んでも、結局のところプレイヤーが興奮するのは価値のあるプロモカードを無償か安価で提供するとかそんな所だ。つまりばら撒きである。
そんな事をしてもゲームそのものが面白いわけでなく、プロモを獲得する作業に参加しているだけで、過ごした時間を楽しみで埋め尽くすことは出来ない。
面白さや楽しさというのは、プレイヤー間で節度を守りながら紳士かつ社交的にゲームに参加し、ホストはきめ細かい視点でその間の時間のサポートして始めて成立すると言える。

そしてその本質を上手に体現しているお店があった。
渋谷ミントである。
このお店は有名芸能人がマジックで遊ぶために来るという口コミで有名だが、このお店で何よりも素晴らしいのは人材であった。
トレカショップであり、デュエルスペースであり、何よりバーであるこのお店は客商売の集合体である。
このお店を訪れた人に楽しんで帰って貰うため、スタッフは常に細やかに気を使う。
訪れたのは8月の下旬、ちょうど「プレインチェイススタンダード」というカジュアルイベントを行っていた。
プレインチェイスの次元カードの解釈やゲーム上での処理に躓くと、サッと近付いて適切な回答を用意し、初めて来たお客さんへするお店の説明には押し付けがましい所が一切無い。
チャージ料としてオーダーするドリンクも勧めるタイミングが絶妙で、「遊ぶ時間が足りないからオーダーするか」ではなく、「遊ぶ時間はまだまだあるけどお酒美味しいし、喉が渇くからオーダーしよう」という具合だ。
一人で来る人が自然な形で他の人の輪に入れるように水を向けたり、カウンター越しにお客さんのゲームに付き合いながらお酒作ったりと、付加価値型ショップとしてはかなり高水準なパフォーマンスを見せた。
特にイベント進行を仕切っていた大根田さんというスタッフの仕事ぶりには学ぶものも多く、お店の売上に悩むショップは渋谷ミントに勉強しに来ると良いんじゃないか。
楽しむ事より、彼の接客術をもっと見てみたい思いから、関東地方に行くことがあったらまた渋谷ミントに行きたい。
楽しさを提供すると言う分野では頭一つ飛びぬけているお店だった。